チームPLUS 1

店主敬白

1.売れた!

開店後最初の日曜日。金甲山帰りの仲間達がいっぱいお店。小林さんがご来店下さった。

「ほぉー・・・ココも変わったなぁ。浦安は広いのがエエけど、ちょこっとした用足しするんも何もかにも遠いんよなぁ。コーバのみんなの足にスクーターをひとつ用意してくれんじゃろうか。なんでもエーから。と言うよりヨー判らんし・・・お奨めはどれかなー。1台たのみます」

「えっ!・・・(ホントに買うんですか、ウチでイイんですか?いろいろお付き合いもお有りでしょうに・・・)有難うございます」

さー、困った。ホンダ・スズキ・ヤマハ3社からお預りしているスクーター。計10台の中から何を奨めるか?実はスクーターという代物に殆ど乗った記憶が無い私!形は違えど・・・中身は全部同じだと見ていた当時の私でした。

 「ここでバイク屋やろう!」と、見た時に迷わず決めた大きなニセアカシヤの下の小さな倉庫。小林木工という社名の木工所だった。中の様子を見せてもらおうと大家さんにお願いした。

「今月いっぱい小林さんが仕事されてるんで、電話しとくから行ってごらん」

と、大家さん。ワクワクしながら半分開いたシャッターの外から、「こんにちは」と、マル鋸の回転音に負けない大きな声で叫ぶ私。オガ屑を払いながら、笑顔で迎えてくれたのは社長の小林さんだった。

「いやー、もうすっかり手狭になってしもうて、浦安の方に越すんよ。今度は広いから今までの倍は働かんといけんのじゃけどなー。土地買うにしても色々あって・・・」

と、聞いてもないのに新しく土地買って、新築の工場を建てるにあたっての苦労話を始めた小林さん。キラキラした目で明日を語る同年代の職人さんだった。発展的、進展される事業所のアトに入るのは悪く無い。「こりゃエエことじゃ」と思った。

 リフトを残してもらえると言われる。これならコーバの2階も有効に使える。コーバ側の入り口も三角だけどバイクなら結構沢山置けそう。この水道は排水溝の蓋の上に在る。こりゃ洗車に丁度エエ。まぁ、工場の床はどにかせにゃいかんけど、こりゃイケる。やっぱりココだ!

「そーかな?ここでバイク屋をするんかなぁ。お互い頑張らにゃなぁイケンなぁ」

と、小林さん。その小林さんが、「何でもイイから1台くれ」と、自ら訪ねて下さった。

 ホンダはイブ、タクト、リードの3車種が当時の主力販売車種。ヤマハはジョグとミント。スズキはハイとカリーナだったと思う。バイク屋始めているくせに、興味の薄い対象に関しては商品説明しようにも、何にも知らない。物を買って頂くのも初めての34歳の私でした。

「やっぱりバイク選びは1番最初に形の好きずきが大切じゃから・・・この中でどの形が1番お好きか考えてみて下さい」

と、言葉選びながら、なんかそれらしいコトを言った。全く「売って」いない。ただただお客様に「買って」頂いている右も左も判らない新米店主です。

「そうかな。じゃあ、これにしよう。この赤キレイじゃが。カッコもこれが1番気に入った」

小林さんが選んだのは当時発売になったばかりの、タクトフルマークのワインレッドでした。何はともあれ、当店新車販売1号車が出た!売れた。並べているスクーターの中で1番儲けの少ない車輌。それが最初に売れた。

後日、スズキのアキヤマ君が営業指導に訪ねてくれた。

「あんなー内田さん・・・商売しょんじゃからなぁ・・・儲けにゃイケまぁ。商売なんじゃから・・・なっ。 タクトの新柄が欲しいといって来られたお客さんなら、そりゃそれでエエ。販売1号車おめでとサン。とワシも言うよ。 じゃけどもじゃなぁ・・・ホンダ売ったから言うとんじゃネーよ。エエかな。だいたい今回の話は、これが欲しいって明確な意思持たずに、しかも自ら買いに来て下さったお客さんじゃろ。先ず、何でもエーと言われるお客さんには、選んであげるのが商売、親切ゆーもんで、そりゃ。 そうした時には粗利もちゃんと考えた上で、お客さん自身に選択理由を持たせてあげるお手伝いをせんといかんのよ。 ウチのバイク売った方が儲かるじゃろーに。スクーターだからこそ少しづつでも儲けんといけんのよ。そうした時は、ウチのバイクちょこっと押してもバチは当たらん。それが商売、『売る』ってことじゃが。判るじゃろ?」

と、叱られた。

 言われるコトは確かにその通りと納得出来る。アキヤマくんにもその会社にも随分な支援を頂いているのも忘れている訳ではない。でも・・・、色だろうが、カタチだろうが小さな要因であっても、お客様が自分で感じる「欲しい気持ち」、それに任せる。それを尊重する。それがバイクを買うにあたっては1番大事なはずよねー・・・バイクってそうやって買われるのが正しいモンだ。と、やっぱり思ってしまう開店当初の私でした。

「私でした」とか過去形で言っていますが、近年になっても・・・

 「去年はなぁ○△×台売れたんじゃけど、今年はもっとイカにゃいかんのよ。売れるじゃろうか」

と、呑みながらトリちゃんに話したのが運の尽き。

 「おとうさんなぁ、あのなぁ、エエかげん『売れた』ゆーの止められー。『売った』言われー。『売れた』とか、そんなん言うと、何のために何台売らなきゃいけないのかの目的、目標の設定。販売台数に対しての明確な意思とその達成のための計画。そんなんが何にもなかったゆーことじゃが。だいたいなぁ、事業計画・・・達成のためのマーケティング・・・ ・・・そのあたりが十日市の頃と違ってきてしかるべきで・・・なのに・・・ 今はなぁ、法人として、組織として・・・・そんなんじゃこの厳しい環境で・・・ 違う?」

私がいくら言われ易い人間でも、普通の人だとすごく言いにくいだろうと思うコトも含めて、ばしっとバシバシ言ってくれた。その時は私が呑み代払うって言ってた日なのに。

 そうだと思う。ごもっともだと思う。そうあらなくてはならないとも思う。少しはそうできているつもりでいる。でも、販売第1号車のタクト以来、本質的なトコが全く「治って」ないまま、どうにか食わせていただいている私でございまして・・・。