チームPLUS 1

店主敬白

3.満員御礼・売上げ2,800円

日曜日。店内、コーバも含んで毎週人で溢れかえっていた。
外から見るとお客様で満員御礼!「あの新しいお店はナンなんだろうか。バイクでやって来るお客さんがやたら多い」とかの評価はいただいていたと思います。

 「ブーツじゃ蒸れる」とお店には、マイ・スリッパが増殖していた。金甲山帰りの仲間たちはそのマイ・スリッパに履き替えてお店の中でバイク談義。ツナギ脱いで、短パン姿でいよいよマッタリモードになってのバイク談義は続く。

 お店からあふれたヤツらは裏の用水路沿いにしゃがみ込み、これまたこれまたニコニコ顔でああだこうだとバイク談義。挙句に、この用水路分科会はナント!鮒釣りまで始めてしまう始末。はす向かいに在ったヨロズ屋から「よい子の浮き釣りセット120円」を買ってくる。立ち枯れのセイタカアワダチソウを引き抜いて竿に。例のニセアカシアの根っこを掘ればいつでも餌のミミズは調達出来た。けっこうよく釣れた。当然?私も先調子の立派なセイタカアワダチソウ竿を1本確保していた。

 イサオちゃんがコーバの天井を思案顔で観察している。と思ったら、いきなりハンモックを吊り始めた。髭面のオジさんが短パンTシャツ姿でコーバの天井から吊り下がっている。いったいどんなコーバなんだ。

「風通しがよーて、よー寝れるで、こりゃエエ。ここに決定」
と、イサオちゃんはご満悦。

 そうこうしていると、店の軽トラで出て行ったトリちゃんが、近くにオープンした「餃子の王将」から大きなお持ち帰りセットを買って来る。

「お昼にしよ!○―ルも有るよ」

皆を誘う。コーバの床に新聞紙を敷いて車座、昼○―ル。

「オイオイ。こりゃちょと・・・」
と、思うものの、私も3杯くらいだけいただく。

 前の歩道は皆のバイクの品評会状態。ピカピカに磨いた主力商品のスクーター達は全く存在感が無くなる。ただの置物になってしまっている。ここは商いスペースと言う事をスッカリ忘れている。仲間は。いや私も含んで(と気が付いたのは随分後の事だったけど)。

 今考えると、新規の若いお客様がフラリと入るには随分と抵抗がある状態だった。いわんや若い女性をや。そんな状態のお店でも、少しだけお年を召された女性は何食わぬ顔してご来店下さる。

「オニーちゃん、パンク直してくれるかなー?」
「エッ、ボクの事ですか?」
「ココはバイク屋さんに見えるけど違うンかなぁ?」
「イヤーその通り、バイク屋ですとも!」

外したチューブを軽石でシコシコ研いで、加硫済を塗って待つ事5分。そこで取り出すのは思い切って仕入れたダンロップのパンクパッチ。少年時代にお世話になったバイト先のオヤジさんに教えてもらった、チューブを切って角を落とした伝統の手製パッチだと材料代はタダだったけど。

「バイク屋さんはちゃんとしたパッチ使ってますよ。カブと違って200キロも出る今のバイクのパンク修理はちゃんとした物使うべきです」
と言われ、例によってそこはセールスに弱い私の事。
「なるほどぉ・・・そうだよなぁ」
迷わず初期仕入れに加えた物だった。その後すぐに大型バイクはチューブレス時代に突入。殆どのパッチはカブとスクーターに使われた。自転車にも。ネコ車の車輪まで。

「ついでにアブラやっときます。ほらこんなにギーギー音がしてます」

可動部全てにスプレーグリスかけて、ブレーキ調整も。当然前のタイヤの空気圧もチェック。

「じゃ800円いただけけます?」

と、申し訳無さそうに言う新米店主に、

「お釣りはタバコでも買われー。あんたサービスええなー。髪の毛長いけどチャンとしてくれたなぁ。アンタ手際もエエがぁ。やっぱりここはバイク屋なんじゃなぁ。お礼じゃ」

と、1,000円札をいただく。この200円を売上に計上すべきか、それともポケットに入れるか悩む間もなく、カぁーちゃんの無常の手が音も無しに近寄ってサッと取り上げていく。

午後3時時点での売上合計は1,000円。

「これで今日の親子4人の食費は確保したな、後はビール代じゃ」 

夕方になっても人だけは減らない。ほんの若干入れ替わった仲間達の1人が言ってくれる。

「そうじゃ、今朝オイルランプがチカチカしとったなー。ここ、2サイクルオイル有る?」

と失礼な質問。有無を言わさず高い方のウルトラGP2を渡す。

「はい、1,500円。ついでに他も見とといてあげる。あれー、テールランプ切れとるよ。入れといてあげるな。追加300円」

新規お客様売上計1,000円。身内売上1,800円。当日売上合計2,800円の楽しい日曜日。やっぱり金銭登録機は要らなかった。